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発想の転換で新たな価値を創造 とっきょ

Vol.65 2025年8月22日発行号

最新の知財トピック

特許庁広報室のここに注目

「コンセント制度」を適用した初の商標登録を行いました!

特許庁は、2025年4月7日、昨年4月に開始された「コンセント制度」を適用した初の商標登録を行いました。本制度は、先行登録商標と同一又は類似する商標であっても、先行権利者の承諾(コンセント)等があれば商標登録を認める制度であり、これにより新規事業でのブランド選択の幅が広がることを通じて、中小・スタートアップ企業を始めユーザーの皆様の新たなチャレンジを後押しします。

商標登録を認める条件 先行権利者の承諾(コンセプト) 混同を生ずる恐れがない

車多酒造の人気日本酒ブランド「五凛」の最上酒として誕生。 「玻璃」=クリスタルの名称にふさわしく、シルクのようななめらかさとクリアな味わいを醸す。

シャディが展開していた総合型カタログギフト「玻璃 HARI」(2021年に発刊が終了)。シャディの総合型カタログギフトは全15コースあり、品質の高い商品が掲載されている。

商標法におけるコンセント制度とは?

先行登録商標があっても、
先行権利者の承諾(コンセント)等があれば商標登録が認められる制度です。

東京共同弁理士法人弁理士

通場 英哉さん

東京共同弁理士法人パートナー弁理士。慶應義塾大学経済学部卒業。電子、半導体医療機器など幅広い分野で複数国における特許取得戦略をアドバイス。意匠・商標分野でも家電やアパレルなど幅広く活躍する。

コスト削減・手続き簡素化を実現

 2024年4月1日に導入された商標の「コンセント制度」は、先行登録商標と類似する商標であっても、先行権利者の承諾(コンセント)と、出所の混同を生ずるおそれがないと判断された場合に登録が認められる制度です。
 通常、先行登録商標と類似する商標を出願した場合、先行登録商標の指定商品・サービス(役務)と類似の範囲内では登録することができません。意見書で非類似の主張をすることもありますが、極めて似ている場合は反論が難しいことがあり、その場合は、譲渡交渉やいわゆるアサインバック※が行われていました。しかし、これらの方法は、複雑で長期化することが多いだけでなく、印紙代等の費用のかかるものであったため、特に中小企業にとってはハードルが高いものでした。
 新たに導入された「コンセント制度」では、手続きの簡素化とコスト削減が実現され、さまざまな商標が登録されている現在、先行登録商標の指定商品・サービス(役務)が広範囲に及ぶ際など、諦めざるを得なかった状況に対応する制度として、特に中小企業のブランド戦略の選択肢を広げることが期待されています。
 しかし、この制度を利用するにはいくつかの注意点があります。先行権利者との交渉が必要であることに加え、登録後も「将来にわたって混同を生ずるおそれがない」ことを維持するため、具体的な使用態様等を定めた合意書の締結等が必要となります。そのため、将来の事業拡大において商標の使用範囲が制限されないよう、将来を見越した交渉をしましょう。また、一方の権利者が不正競争の目的で、市場の混同を生じさせた場合には、第三者による取消審判請求が可能です(左図)。「コンセント制度」の利用においては、専門的な交渉や合意内容の検討が重要になってきますので、利用を検討される方は、弁理士などの専門家への相談をお勧めします。

  • ※商標登録出願人の名義を、一時的に先行権利者の名義に変更することで、先行権利者と新たに出願する出願人の名義を一致させて拒絶理由を解消させ、商標登録を得た上で、先行権利者から元の商標登録出願人に再度名義変更を行う等の行為。左図の第三者による取消審判等の対象となった。

コンセント制度の導入について:特許庁
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/consent/index.html

「コンセント制度」を適用した初の商標登録を行いました:経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2025/04/20250407001/20250407001.html

Vol.65 記事一覧

特集1 株式会社HPC沖縄
特集 災害に知財で立ち向かう

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100年の耐久性。デザイン性も

沖縄から世界へ 次世代超軽量コンクリートの可能性

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特集2 株式会社Laspy
特集 災害に知財で立ち向かう

Interview 02

防災備蓄を街のインフラに!

知財が加速させた
スタートアップのビジネス展開

株式会社Laspy

Laspyが提供する防災備蓄ワンストップサービス「あんしんストック」は、都市の防災インフラを再構築する画期的な試み。コロナ禍での社会不安を原点に、安心な社会の実現を目指す藪原社長の挑戦と、その事業を支える知財の力に迫ります。

漫画 株式会社アーキビジョン21
知財戦略どうやって取り組んでいるの?

「普及」と「品質維持」に知財を活用

災害時にも安心して住める高品質住宅を全国に!

株式会社アーキビジョン21

仮設住宅への展開が期待されるムービングハウス「スマートモデューロ」。その普及のために知財を活用したブランド保護戦略を展開するアーキビジョン21の活動を紹介します。

INPIT支援 四国プランニング株式会社
アイデア・出願・事業展開・海外展開等

知財支援はINPITにおまかせ!

四国プランニング株式会社

「INPIT知財総合支援窓口」は独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が、47都道府県に設置している地域密着型の相談窓口です。中小企業をはじめとした企業の皆さまの経営課題解決に向け、自社のアイデア、技術、デザイン、ブランドなどの“知財”の面から支援を行います。

特別企画 産業財産権制度140年
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ハーグ協定のジュネーブ改正協定への加入

2025年は、日本で専売特許条例が公布されてから140年となります。これを記念して、2015年から2025年までの10年間における印象的な出来事と、現役職員の振り返りを連載していきます。

知財トピック コンセント制度
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「コンセント制度」を適用した初の商標登録を行いました!

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特許庁からのお知らせ
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INPIT外国出願補助金 令和7年度第2回公募のお知らせ

模倣品対策支援事業(サポート型・セルフ型)公募のお知らせ

福島事例 株式会社クフウシヤ
知財が創る未来

ふくしまイノベーション「企業ファイル」FILE#05

株式会社クフウシヤ

2024年1月、特許庁は福島県及び公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構と、知的財産の保護及び活用に関する連携協定を締結しました。知財で福島の新しい時代を切り開く企業やプロジェクトを紹介します。

身近な知財 株式会社WILLTEX
身近な知財

災害時に“あったかい”を提供する電子レンジバッグ

株式会社WILLTEX

さまざまなカタチで暮らしに進化をもたらす知財たち。新たなアイデアによって生まれた多彩なアイテムを紹介します。