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Vol.39
広報誌「とっきょ」平成30年10・11月号

特集1

特許が支える
中堅・中小企業独自のものづくり

千石(兵庫県加西市)

特許技術「遠赤グラファイト」で
アラジンブランドを海外へ発信

OEM事業で培った信頼と技術

兵庫県加西市は三洋電機の創業地で、いわゆる企業城下町として発展。千石も二次下請工場として1953年に発足し、その後、大手メーカーの部品製造や電化製品、ガス製品などのOEM事業を手掛けてきました。

併せて業績を伸ばしているのが「アラジン」製品です。イギリスで生まれた「ブル―フレーム」と呼ばれるストーブが代表的なブランドですが、2002年にこれを保有する日本エー・アイ・シーとOEM契約し、その後販売権を取得。さらに大手電機メーカーから「遠赤グラファイト」を権利ごと譲り受け、両者を組み合わせた魅力的な製品を生み出しています。

ポリイミドのシートを熱分解して結晶化した「グラファイト」は、熱伝導率が鉄の10倍、銅の2~4倍で、電源を入れて約0.2秒で1300℃にまで達します。これを利用した「グラファイトトースター」は、外側はカリカリ、中はモチモチのトーストが焼けると話題沸騰。メディアでとりあげられたことも後押ししてて、近年流行する高級路線トースターの一角として高評価を得るようになりました。また、どこか懐かしいデザインとナチュラルなカラーリングも人気です。

【左】デザインと性能を備えたグラファイトトースターの写真【右】千石唯司代表取締役社長の写真
【左】デザインと性能を備えたグラファイトトースター【右】千石唯司代表取締役社長

千石唯司代表取締役社長は「商品の企画からデザイン、設計・製図、技術開発、製造、そしてアフターサービスまでを一貫して社内で行うことが当社の強みであり、また社員同士の風通しがよいのも特徴です。チームを組んで行う商品開発の現場でも、若い社員からベテランまで、いろいろな意見を反映しています」と語ります。平成29年度の「グッドカンパニー大賞 優秀企業賞」「ひょうごオンリーワン企業」に選出され、企業としての知名度も向上。注目企業として、近隣府県からも人材が集まっています。

海外展開では知財管理がより重要に

同社では中国とフィリピンに工場を持ち、兵庫県内と合わせて6つの製造拠点を保有。国内はもちろん、海外展開を見据えて早くから外国での特許や意匠、商標権を取得しており、現在の取得実績は70件以上です。中国や欧米をはじめ、近年需要が拡大している東南アジアでの商品展開にも力を入れます。

「海外を相手にする場合、模倣のリスクが大きいので知的財産権の管理は重要です」と経営企画部の石原裕康部長。中国で「ARADDIN」の商標がすでに他社に押さえられていたという経験もあるそうで(そのためSENGOKU ARADDINで登録)、迅速な判断が必要だとも指摘します。

年間55万本作られるグラファイトヒーター。今後、生産体制を拡充することも検討しているの写真
年間55万本作られるグラファイトヒーター。今後、生産体制を拡充することも検討している

「日本製への信頼感は今なお大きい。そのため、グラファイトヒーターなどの基幹部品は本社併設の工場で製造するなど、品質への安心感・期待感を重視したスタンスをとっています」(石原部長)。

【左】石原裕康経営企画部部長の写真 【右】グラファイトヒーターは、商品ごとに適した形状を開発の写真
【左】石原裕康経営企画部部長 【右】グラファイトヒーターは、商品ごとに適した形状を開発

瞬間発熱し、高温に耐える遠赤グラファイトは、使用時間を短縮できるため環境に優しく、調理場の熱さ対策にも効果があるといいます。「年に一度はアラジンらしい、ひと味違った商品を発信していきたい」と話す千石社長。先見の明と決断力を備えたトップの下、今後も世界に誇る新しい価値観を発信してくれそうです。

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