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特集1
フジワラテクノアート(岡山県岡山市)
醤油や味噌、清酒、焼酎など、古くから日本の食生活に寄り添ってきた醸造食品。フジワラテクノアートは、1933年の創業から醸造分野の機械製造を手掛けてきました。多くの人手や厳しい作業環境が求められる醸造工程において、人の感性まで織り込んだ現場目線の機械やプラントが全国の食品メーカーで導入されています。
顧客の要望に応じたオーダーメイドや、機械化できないとされていた工程の開発など、まだ世にない機械製品を送り出す高い技術力が同社の強み。「新製品を開発したら、基本的にすべて特許出願します。開発する以上、特許にならないものを作ってもあまり意味がないと思っているんです」と話すのは、狩山昌弘常務取締役。技術開発部の中に担当者を置き、開発の傍ら知的財産権の管理にも多くの時間を割いています。
業務用の機械は型番のみの管理も珍しくないなか、同社では近年、意識的に親しみやすい名称を採用。「『ソニックステラ』は音速殺菌という意味の造語。基本原理を名前にしているので、実は名称が開発の肝なんです。名前があるほうがお客様も馴染みやすく、社内でも好評ですよ」(狩山常務)。
Vapor pressure Equalizing Control System(水蒸気分圧均一化制御システム)の頭文字をとった「VEX」は、CSを似た発音のXに置き換え、よりキャッチーな印象に。また、新商品「FEDY」は、Fermentation by static Equal Dehumidification(静的均等除湿培養システム)の頭文字FEDに、開発者・山本さんのYを付けました。これらの商品名数件を、国内および中国を中心とした海外で商標登録しています。
実はかつて、韓国企業へ納入した同社商品「RX」が現地で模造され、その技術が中国に流れたことがありました。中国にRXを売り込んで初めてそれを知った同社は、海外特許の必要性とともに、商標まで模倣されるリスクに思い至りました。
「企業ロゴや商品名まで真似されたら、当社の責任で粗悪品が出回る恐れがあると焦りました」と狩山常務。以降、社名や企業ロゴの扱いはもちろん、商品名にも気を遣います。同社の粉体種麹供給装置「パウフィーダー」は、当初「ファインフィーダー」として業界でも定着していましたが、あるとき商標を確認し、同じ分類で同名が他社に登録されていることが判明。認知された商品名の変更をためらったものの、のちのリスクを重く見て改称し、商標登録。最近では類似する特許だけでなく、商標も必ず確認したうえで開発を進めています。
「社員への知財教育にも取り組み、他社製品が自社特許に抵触していないか、逆に他社の特許を侵害していないかなど、一人ひとりの意識が向いてきたように思います。模倣を防ぐこともそうですが、製品を安定的に売り続けるためにも、知財、特に商標が必要なのではないでしょうか」。現在、2050年を見据えて開発ビジョンを掲げる同社。技術力を武器に、知財を楯に世界の食文化を支えていきます。