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特集1
アマダナ総合研究所(東京都千代田区)
「東京ガールズコレクション(以下、TGC)」や「秘密結社鷹の爪」などの商標権を保有・展開するDLEと、家電製品のデザインを手がけるamadanaが、2018年3月に共同出資会社「アマダナ総合研究所」を設立しました。
「家電領域はブランドを展開する手段の1つ」と話す熊本浩志代表取締役社長(兼amadana代表取締役社長)。大手電機メーカーを退職後、自ら立ち上げたamadanaブランドの携帯電話が2008年に発表されると、その後コーヒーメーカーや冷蔵庫、扇風機などを次々と発表してきました。このブランド価値を新たなフィールドに広げるべく、ライフスタイル領域や地方創生事業を見据えて設立に踏み切ったといいます。
後押しとなったのは、旧知であった椎木隆太代表取締役会長(兼ディー・エル・イー代表取締役)からのアプローチでした。「TGCの商標を譲り受けて運営に関わるなかで、世の中に影響力のあるブランド、いわゆる商標の価値を強く感じました。TGCは若い女性が主なターゲットですが、一方でamadanaは、30~50代のセンスのよい、こだわりを持つ方々がユーザーです。このブランドをもっと大きく展開させられないかと声をかけたんです」(椎木会長)。
日本では、プロダクト分野での緻密な技術や実直さがもてはやされることが多くあります。「汗水流して作ったものが評価されるのはもちろんですが、いつまでもそれだけではいずれ限界が来る。日本人こそ、知的財産権のような無形資産によるビジネスを育てるべきだと思っていました」と熊本社長。今回立ち上げた同社では、amadanaブランドを活かしたライフスタイル提案として登録商標「Amadana Music」の展開を進めています。
まず発表したのは次世代型CDプレーヤー。音楽自体が情報として取得される現代において、CDを再生できる機器を持たない人も少なくありません。家に眠っているCDをスマートスピーカーなどにつなげて楽しみを広げようという、現代だからこその提案です。「これも、CDプレーヤーで儲けようとしているわけじゃないですよ。そういう提案を含めて、ブランド構築の手段なんです。Amadana Musicのコンセプトが伝わって、たとえば飲食店やサロンといった外食産業への展開も考えられます。この商標、ブランドが評価されれば、ブランドが働いてくれるようになるんです」と熊本社長が話すように、商品自体ではなく、商品から与えられる情報によってブランド価値を育て上げることが重要なのだといえます。
そのほか、地域の企業とともに土産物開発に携わったり、地元でこだわって作られている製品をマーケットにつなげるためのデザインやブランディングの架け橋になったりといった事業も次々と始めています。
「そこでも重要なのが商標です」と椎木会長は指摘します。「積み上げてきた商品やサービスの実績はもちろん大切ですが、せっかく育ててきたブランドも、権利を持っていなければどこに価値が存在するかわからない。私たちがお手伝いをするうえでも、商標の大切さはまずお話ししています」。「そうです。そのうえで、『その商品をブランドや情報の手段にする覚悟はありますか?』と」(熊本社長)。
アジア企業が急速に伸びている今、「作って売る」のではなく、「体験して得る」ビジネスが求められます。江戸時代に漆器問屋が多かった日本橋室町付近の通称“尼店”から命名された「amadana」が、日本人ならではの感性をベースにしたこれからのビジネスの模様を、日本全国を舞台に描いていきます。