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特集1
AREC・信州TLO(長野県上田市)
長野県全域に複数のキャンパスを有する信州大学。大学本部が置かれた松本キャンパス、工学部、教育学部に分かれた2つの長野キャンパス、農学部の伊那キャンパス、そして繊維学部の上田キャンパスです。
産学連携に力を注ぐ同大学では、各キャンパスにコーディネーターが在籍。2000年に発足した産学官連携支援施設「浅間リサーチ エクステンションセンター(AREC)」もコーディネート機能の1つで、企業が必要とする研究シーズを大学から選んで融合させたり、会員同士の交流をベースとした企業間のマッチングなどを行います。当初は36社だった会員企業は現在、全国の企業や大学を含めた270社に及んでいます。
岡田基幸センター長は、2009年創設の第1回イノベーションコーディネータ大賞・文部科学大臣賞を受賞した経歴の持ち主です。もとは上田市の職員として産学連携に関わり、ARECの立ち上げに奔走したのち、市役所を辞めて現職に就任しました。
「ARECを発足して10年は周辺の企業も様子見でしたが、20年ほど同じ場所で支援を続けてきたことで成果に結びつくようになりました。大学の先生から事業化について相談されたり、会員企業同士の協業サポートを求められたりと、よい連携の場として機能していると感じます」(岡田センター長)。信州大学内でもチームプレーの雰囲気が高まり、大学と複数の企業がともに共創をめざすケースも生まれています。
2017年には上田市、佐久市、千曲市、小諸市、東御市、立科市、長和町、青木村、坂城町の9市町村が連携し、「東信州次世代産業振興協議会」が発足。より広域な企業や機関との連携が進めやすくなりました。国内の大企業や海外企業との協業も視野に入れており、地方創生の1つのモデルとして成長しています。
また、信州大学や長野工業高等専門学校の教員などを株主とする技術移転機関「信州TLO」も繊維学部内に本社を置いています。「旧帝大などと比べれば、信州大学の技術数は多くはありません。単に知財を受け渡しするだけでなく、研究への支援、ノウハウも含めた技術移転、事業化に向けた技術指導や共同研究のマネジメントなど、技術シーズを効率的に活用するための支援は惜しみません」と信州TLOの大澤住夫代表取締役社長。研究シーズをYouTubeの動画で紹介する事業も開始し、実際に動画を見た企業から新たな活用法の提案などを受けています。
信州大学を中心とした産学連携は、企業同士のオープンイノベーションにも発展しています。長野県から生まれる新たなイノベーションに期待が集まります。