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特集1
宝石輸入商として1980年に事業を立ち上げ、1987年に前身となるシバドを設立。バブル崩壊に際して「これからはオンリーワンか、ナンバーワンでなければ生き残れない」と痛感した土橋秀位代表取締役社長は、大手商社などを相手にする輸入商のナンバーワンではなく、オンリーワンの商品開発の道を選びました。
「私の強みは数多の宝石を扱ってきたこと。当時、宝石のカット法が外国で特許取得されたと知り、それなら自分にもできると思いました」と土橋社長。中央に十字が現れる美しいカット法を「クロスフォーカット」として特許取得したのには、自社ブランドを立ち上げ、唯一無二の商品展開を行うことが念頭にありました。
商品価値の向上を模索するなか、ダイヤモンドが常に揺れ動き、より美しく輝く「ダンシングストーン」という宝石のセッティング構造を開発。すぐに国内外で商標、特許、そして意匠の出願を行いました。
毎年多くのデザインが発表されるジュエリー業界では、デザインを知財として保護することは稀だといいます。しかし、「ビジネスで必要なものは些細なものでも知財で守る」という土橋社長の意識のもと、細かなパーツや販促物、パッケージに至るまで意匠権を取得しています。
現在は自社内に製造拠点を持たず、県内の協力企業に製造委託するファブレス型を採用。ジュエリー製造業が盛んな山梨の強みを活かし、生産量を確保しながら地場の産業発展にも貢献しています。
クロスフォーカットが自社ブランドを冠しているのに対し、ダンシングストーンにはあえて社名を付けていません。「『クロスフォー』と名の付く商品は、他社ブランドでは扱ってもらいにくい。一方で、ダンシングストーンの技術やパーツを販売し、ライセンス契約で広めていくビジネスモデルなら、大きな市場である海外でも展開しやすいと考えたのです」(土橋社長)。
コアパーツには発売当初からPCTナンバーを刻印し、特許出願済みであることを海外でもアピール。さらに各パーツの意匠権を取得し、意匠による税関差止を行います。
土橋社長は「コアパーツなどは、見た目でわかる意匠で保護するのが効果的」と話します。国内外への知財の出願件数は350件以上、そのうち意匠権は半数以上の196件に上ります。
また、特にインターネットサイトなどでの模倣品販売が多い中国を中心に、調査から警告、行政法執行の申し立てなど、徹底的に模倣品対策を実施。法務・知財課の担当者2名体制で取り組んでいます。
現在、「ダンシングストーン」は完成品だけでも世界中で50万個が販売されています。米国や欧州などの消費国では商標を、アジア、インドなどの生産国では特許や意匠を中心に取得。特にアジア圏の生産国では、比較的細かいパーツまで権利化しています。「すべての国で、あらゆる知財を権利化しようとすれば、当然ながら膨大なコストがかかります。現地の販売状況も踏まえ、ハーグに限らず、PCTやマドプロなども活用して効率的に権利取得しています」(土橋社長)。世界30カ国以上の国・地域で販売される人気商品は、綿密な知財管理と模倣品対策によって輝きを保っています。