ここから本文です。
知財が広げるユニバーサルデザイン
─ 誰もが暮らしやすい社会の実現へ ─
今、ユニバーサルデザインへの注目が高まっています。
全ての人に利用しやすい製品やサービスを届けたい ─。
知的財産(知財)を活かし、ユニバーサル社会を目指す、あたたかで、優しい取組の数々を紹介します。

ユニバーサルデザインの浸透と現状の課題
ユニバーサルデザインという言葉からは「形状」が連想されがちですが、ユニバーサルデザインとは、年齢、性別、能力、国籍などにかかわらず、全ての人が利用しやすいように、建築物、製品、情報などを設計する考え方を言います。ユニバーサルデザインは、全ての人が一人ひとり尊重され、社会のあらゆる分野の活動に参画する機会を確保し、その能力を十分に発揮できる「ユニバーサル社会」を実現することを目指しています。単なるバリアフリー化にとどまるものではありません。
平成30年、ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律※1が生まれました。このことからも、ユニバーサルデザインを推進することが、社会において重要な課題であることがわかります。
現在、ユニバーサルデザイン化は多様な分野で進展しているものの、まだ十分に進展しているとはいえません。内閣府の意識調査※2 によると、バリアフリー化・ユニバーサルデザイン化が「進んだ」という認識は、「病院、診療所等の医療施設」や「鉄軌道駅」といった施設をはじめ交通機関において比較的高い傾向にあります(上図参照)。しかし、そのような分野でも50%を超えているものはありません。
日本のユニバーサルデザイン化はまだ歩みを始めたばかりであり、今後より幅広い分野で、もっと進めていくことが求められています。
革新的なユニバーサルデザインを社会に広める知財
ユニバーサルデザインの取組を進める上で、知財はその実現を支え、持続させる上で重要な役割を果たします。
革新的なユニバーサルデザインは、使う人の「困りごと」に応えるモノの本質を追求した創意工夫から生まれます。暮らしの中にある小さな困りごとも見逃さず、その解決策を見つけ、具象化したものです。
特許権、意匠権、商標権といった知的財産権は、ユニバーサルデザインを他者の模倣から守る「盾」となり、これにより、安心してユニバーサルデザインを市場に提供し、社会に広めることができます。また、これは、新たなユニバーサルデザインを継続的に開発することにもつながります。
当たり前だと思っている身の回りを「不具合を感じている人がいるのではないか」という視点で見つめ直すことから、ユニバーサルデザインは生まれます。そうした思いやりの気持ちが世の中に溢れ、そして誰もがユニバーサルデザインという言葉を気に留めなくなったとき、きっと本当のユニバーサル社会が訪れるのでしょう。本特集では、そんな未来のために知財を活用して挑む様々な取組を紹介します。
Interview01
オムロン太陽株式会社
ゆにもの特許
知的障がいや精神障がいのある方の雇用ニーズが高まる中、オムロン太陽が取り組む「ゆにもの」(ユニバーサルものづくり)。
「ゆにもの」に関する知的財産権を無償で社会に開放するという画期的な戦略の狙いは、オムロングループ全体が目指す、誰もがいきいきと活躍できる未来社会の実現にありました。
障がいの有無に関わらず、全ての人の働きやすさを
当社は、「世に身心障がい者はあっても仕事に障害はあり得ない」を信念としていた社会福祉法人「太陽の家」を設立した中村裕医学博士と、事業や経営を通じて社会に貢献していく姿勢を社憲としたオムロン株式会社の創業者・立石一真の理念が共鳴し、1972年に設立されました。
創業当時の障がい者雇用は、身体障がい者が大半を占めており、バリアフリー化や身体障がいのある社員にとって使いやすい治工具の整備に取り組んできました。しかし、近年は、知的障がいや精神障がいのある社員が増加し、従来のように身体障がいのある社員が働きやすい現場改善を行うだけでは不十分になってきました。そこで2017年から、ユニバーサルデザインの状態でのものづくり、「ゆにもの(ユニバーサルものづくり)」をスタート。障がいのある社員もない社員も最大限の能力を発揮でき、いきいきと仕事ができる現場づくりを目指しています。
「ゆにもの」は、以前は障がいの名称でその作業工程に対応できるかを判定していましたが、現在は「コミュニケーションが苦手」「数を数えるのが苦手」「下肢を使う操作が苦手」など、「苦手な動作や機能」の種類で分類しています。これにより、障がいの有無に関わらず、全ての社員を「苦手な動作や機能」の種類で分類することが可能になりました。
社会全体の進化のために知財を無償開放
当社が「ゆにもの特許」と呼ぶ知財権の取得は、オムロン本社の知財担当者が、現場のアイデアを見かけ、特許を取得できそうだと考えたのがきっかけでした。例えば、片手での作業が難しくても正確にロット番号を捺印できる「捺印治具」は、障がいのある社員だけでなく、全社員にとって使いやすいもの。また、作業マニュアルの動画化も、障がいのある社員だけでなく、全社員にとってわかりやすいもの。特許出願したところ、知財担当者の予想どおり、特許を取得。これらの発明は、現場の社員の気づきから生まれたものですので、自分たちの創意工夫が特許として公に認められるという「成功体験」が、障がいのある社員を含む全ての社員の仕事のやりがいにもつながりました。
現在、「ゆにもの特許」は、使用を希望する企業・団体に無償で提供しています。社内だけでなく、社外の大勢の人に使用していただくことで、結果として障がいのある方の雇用が社会全体で増加し、社会課題の解決、より良い社会への前進になると考えています。また、他の企業、大学、役所などと、障がい者雇用の改善という高い目標を共有することで、社会全体に、競争ではなく協業、独占的・排他的ではなく「一緒にやりましょう」という、他者に対する優しい気持ちを広めていきたいと思っています。
【ユニバーサルものづくり
(ゆにもの)】とは
「働くことを希望する
障がいのある人、ない人が
その機能を最大限に
発揮できる職場」であること
オムロン太陽では、「ゆにもの」に関連する知財を
総称して「ゆにもの特許」と呼んでおり、
特許権・意匠権・実用新案権を含めた
20件の知財ポートフォリオで構成されている。
なお、「ゆにもの特許」は、
共生社会の実現と社会貢献を目的に
無償開放している
(利用に際してはライセンス契約が必要)。
オムロン太陽株式会社
経営管理グループ長
田部 能浩さん
1990年オムロン入社後、電子部品の商品開発を10年、商品事業部を15年経験した後、アメリカの営業拠点で経営サポート。帰国後営業統括で様々なプロジェクトを運営し、2024年からオムロン太陽で人事総務と経営企画を統括。
オムロン太陽株式会社
Interview 01
ゆにもの特許
ユニバーサルデザインと知財で描く誰もが働きやすい社会
オムロン太陽株式会社
知的障がいや精神障がいのある方の雇用ニーズが高まる中、オムロン太陽が取り組む「ゆにもの」(ユニバーサルものづくり)。「ゆにもの」に関する知的財産権を無償で社会に開放するという画期的な戦略の狙いは、オムロングループ全体が目指す、誰もがいきいきと活躍できる未来社会の実現にありました。
Interview 02
中小企業こそ
知財を力に、安心を世界へ広げるデザイン革命
錦城護謨株式会社
創業89年の歴史を持つ老舗ゴムメーカーが、なぜ福祉分野へ進出したのか。視覚障がい者誘導マット「歩導くんガイドウェイ」は、デザインと技術の力で点字ブロックが抱えていた課題を解決し、令和7年度知財功労賞(デザイン経営企業)を受賞。知的財産を「攻めの武器」として活用し、社会の課題解決に挑み続ける錦城護謨の取組について、太田社長に伺いました。
人に優しい『素直』なものづくり
ユニバーサルデザインは当社商品開発の“当たり前”
株式会社レーベン
人々の困りごとを解決するために次々に新商品を生み出し、知財活用を推進するレーベンの取組を紹介します。
知財支援はINPITにおまかせ!
株式会社アジェンダ
「INPIT知財総合支援窓口」は独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が、47都道府県に設置している地域密着型の相談窓口です。中小企業をはじめとした企業の皆さまの経営課題解決に向け、自社のアイデア、技術、デザイン、ブランドなどの“知財”の面から支援を行います。
専門家派遣でスタートアップの知財活動を支援!
2025年は、日本で専売特許条例が公布されてから140年となります。これを記念して、2015年から2025年までの10年間における印象的な出来事と、現役職員の振り返りを連載していきます。
身近なものの中にあるユニバーサルデザインと知財
身近な生活の中にある様々な製品には、誰もが使いやすいよう工夫されたユニバーサルデザインが採用されています。これらのユニバーサルデザインの工夫は、特許権や意匠権といった知的財産権によって守られ、私たちの暮らしを豊かにしています。その具体例を紹介します。
オンライン発送制度が変更になります
AI関連発明の出願状況を調査し、結果を報告しています
「知的財産スタートブック」を公開しました
ふくしまイノベーション「企業ファイル」FILE#07
古川プラスチック
2024年1月、特許庁は福島県及び公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構と、知的財産の保護及び活用に関する連携協定を締結しました。知財で福島の新しい時代を切り開く企業やプロジェクトを紹介します。
どう着ても正しく着られる、
裏表も、前後もないシャツ
HONESTIES株式会社
さまざまなカタチで暮らしに進化をもたらす知財たち。新たなアイデアによって生まれた多彩なアイテムを紹介します。