• 用語解説

ここから本文です。

Vol.43
広報誌「とっきょ」2019年10月7日発行号

IPランドスケープで俯瞰するAI

AI技術の今、そして少し先の未来のこと
「IPランドスケープ※」の観点からお話します。

※知財情報と、非知財情報(マーケット情報や研究開発費等)を分析。
現状俯瞰・将来展望を示し、事業戦略や経営戦略に役立てる手法。

執筆:株式会社テック・コンシリエCOO 小林誠

AIを活用したプロダクト・サービスの今と将来市場

AIは様々な利用シーンが存在します。
小林誠の写真

近年、スマートスピーカー等の音声アシスタント付きのスマート家電が数多く製品化されてきたようにAIは様々なシーンで利用されます。私がAI活用ビジネスとして注目している例は、ANAなどが加盟するスターアライアンスがNECと協業して本人確認プラットフォームを導入するというものです。※1

NECは顔照合時にディープラーニング技術を取り入れ、顔の向きの変動が大きい悪環境下やカメラから遠いような顔画像に対しても高精度を維持する性能強化などに取り組んでいます。将来的には空港などで旅客が立ち止まることなく、顔認証で本人確認が可能になる見込みです。単なる業務効率化だけでなく旅客の利便性を高め、さらには出入国の安全管理という社会課題も解決しうるAIを活用した新規サービスの好例といえます。

FACE AUTHENTICATIONのアイコン

米国の調査会社レポート※2によると、グローバルでのAI関連ソフトウェアに限った市場規模(売上高)は既に約100億米ドル。2025年には約1,200億米ドルに上るといわれています。さらに、後述するAI関連発明が採用される装置やサービスまで含めた経済波及効果を考慮するとさらに莫大な市場規模になるでしょう。

※1 NEC News Room「スターアライアンスとNEC、生体認証による旅客の体験価値向上を目的に協業」
https://jpn.nec.com/press/201907/20190729_03.html(外部サイトへリンク)
「NEC、米国国立機関による動画顔認証の性能評価で第1位を獲得」
https://jpn.nec.com/press/201703/20170316_01.html(外部サイトへリンク)
※2 Tractica Research Report “Artificial Intelligence Market Forecasts” 1Q 2019

AI関連発明に関する国内の市場動向

AIは様々な技術や適用分野があります。AIの基礎となる数学的、もしくは統計的な情報処理技術を特徴とする「AIコア発明」に加え、画像処理、音声処理、自然言語処理、機器制御・ロボティクス、診断・検知・予測・最適化システム等の各種技術にAIコア発明を適用した「AI関連発明」があります。【図1】

AI関連発明のイメージ図
【図1】AI関連発明のイメージ
※特許庁「AI関連発明の出願状況調査」を基に作成

市場規模はAIの定義や関連産業をどこまで含めるかにより内容が異なるため、一概に比較することはできませんが、少なくとも5∼10年の見通しではAIに関する市場は急速に拡大していくと予測されています。特に大きな市場になるといわれているのは、AIを活用した自然言語処理による言語解析市場や、ディープラーニングによる画像認識市場です。

先のNECの空港向け生体認証サービスは2025年度までに200億円の売上げを目指しているそうです。

【図2】は、2014年以降、日本の特許庁に出願されたAI関連発明の出願件数ランキングです。ランクインしている企業は一見、「この企業がAIの出願をしているの?」と思われるかもしれません。おそらくですが、AIそのものではなく、AIを活用したプロダクト・サービスに関する権利を出願しているのだと推察されます。

様々な状況でも使える汎用的なAIは、いずれ世の中で広く使われる技術になり、インフラ的に広まっていく可能性があります。一方、特定のルールやシーンのもとで使用するようなAIに関する出願件数は、今後もプロダクト・サービスの開発に合わせて、さらに増えていくことでしょう。

AI関連発明の出願人別出願件数(2014年以降の出願で2019年5月までに公開されたもの)の図
【図2】AI関連発明の出願人別出願件数(2014年以降の出願で2019年5月までに公開されたもの)
※特許庁「AI関連発明の出願状況調査」を基に作成
ページTOPへ

Vol.43 Contents 
広報誌「とっきょ」2019年10月7日発行号 コンテンツ紹介

BACK NUMBER
広報誌「とっきょ」バックナンバー