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マーケット情報やビジネス情報の分析に特許情報も加えることで、精度の高いマクロトレンドと、確度の高い競合他社の将来事業を見通すことができます。特許関連データに各社の売上高、研究開発費、注力領域などを掛け合わせて追っていくと、その企業が今後AI技術でどのような製品やサービスを展開し、どのようなポジションを形成していくかの見通しがより明確になっていきます。
例えば【図3】の特許出願件数上位10社について、研究開発費と掛け合わせたデータを見てみましょう。バブルの大きさは累計売上高なので、その企業の規模感を表しています。ただし、この図では特許出願件数(縦軸)はAI関連出願に限定されていますが、研究開発費(横軸)や売上高(バブルの大きさ)はAI以外の費用・売上げも含んでいる点に注意が必要です。AIに特定して、これらの非特許情報を抽出することは困難ですので、あくまで他社との立ち位置の違いを見るものとご理解ください。
まず、NTTの出願件数が高いことが分かります。また、2つの点線が示している通り、企業属性によって2つの傾向があります。NTTをはじめとするIT・通信関係の企業は、ものづくり企業と比較すると研究開発費に対するAI関連の特許出願の比率が高いことが分かります。
一方で、日立製作所をはじめとするものづくり企業はAI以外の分野の開発にも力を入れていると考えられるので、研究開発費に対するAI関連出願数の傾きが比較的小さいことが分かります。ただし、ファナックはものづくり企業でありながら通常の線よりだいぶ上に位置しているので、AI関連の特許に注力しているものづくり企業であるといえそうです。
また、日本への特許出願は少ないですが、通信技術や半導体の設計開発を行う米国企業のクアルコムの研究開発費自体の大きさや、売上高研究開発費率の高さも注目に値します。特許等のライセンス収入が事業の大きな柱の一つであるため、研究開発こそが同社の生命線といえるでしょう。
2019年9月25日
記事を読む2019年9月18日
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