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Vol.43
広報誌「とっきょ」2019年10月7日発行号

IPランドスケープで俯瞰するAI

市場規模が大きくなると予想されている「自然言語処理」と「画像処理」

2つの分野ではどのような状況でしょうか。

自然言語処理分野に含まれる技術の代表例に、機械翻訳があります。機械翻訳の歴史は長く、元はアルゴリズムが中心でしたが、近年ではその処理だけではなくAI技術を活用することで、どのような文脈になるか、例えばその文章がポジティブな意味を持つのか、ネガティブな意味を持つのかなどを考慮した上で翻訳できるようになってきました。また、文章を作る技術も自然言語処理に含まれます。これはAIの技術で初めて実現しました。

さらに、世界には書籍、レポート、Webなど膨大な量のテキストデータが溢れていますが、それぞれ異なるフォーマットで書かれています。このため、これらの大規模なテキストデータを解析するには、データをきれいにするための前処理が必要になります。この前処理によってAIに読み込ませるデータの質・量を向上させることで、更なる自然言語処理の技術改良・発展が見込まれます。

AI×画像処理の特許出願件数と研究開発費の図
【図4】AI×画像処理の特許出願件数と研究開発費
2014∼2018年度の累計件数及び累計額、バブルの大きさは累計売上高を示す

一方【図4】の画像処理分野ではキヤノンの出願件数が群を抜いています。キヤノンのニュースリリース※3を拝見すると、様々な方向を向いていたりする群衆の映像でも、高い精度で人数を推定する技術開発に力を入れていることが分かります。この技術により混雑状況をリアルタイムで把握できるため、状況に応じたスタッフの柔軟な配置や観客の誘導など円滑なイベント運営に寄与するほか、マーケティングにまで活かせるそうです。以上のことから、キヤノンは自社の技術を大規模なイベント運営サービスに活用しようとしていると考えられます。勝手な推測ですが、キヤノンは2025年の日本国際博覧会(大阪・関西万博)等も念頭においた事業展開を狙っているのではないでしょうか。

AIのアイコン
他社の研究開発を「のぞき見」する

特定の技術分野、今回でいえばAI×画像処理分野で出願件数が増加しているということは、研究開発が進み具体的な製品化、社会実装が近づいてきているということです。特許情報は出願から公開まで1年半のタイムラグがありますが、その技術が社会実装されるまでには、そこからさらに数年を要することが通常です。他社の研究開発動向を合法的に「のぞき見」できる唯一の情報源が特許といえるでしょう。

膨大な特許情報を全て読むのは難しいですが、特許明細書の中でも「背景技術」、「発明が解決しようとする課題」、「産業上の利用可能性」を中心に読んでいけば、市場のニーズや用途をある程度探ることもできますし、このような情報を読み解くことは、競合企業の動向を普段から追っている知財部員担当にしかできないことです。そして、これらの特許情報を事業戦略・経営戦略に繋げて活かしていくことが、IPランドスケープの本質です。

※3 キヤノン株式会社ニュースリリース https://global.canon/ja/news/2018/20181029-2.html
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